設立趣意書


特定非営利活動法人中山間地域フォーラム 設立趣旨書


   私たち日本人のふるさとであり原風景でもある農山漁村地域、なかで も平野の外縁部から山間地に至るいわゆる「中山間地域」には、多様な自然生態系、美しい風景や伝統文化がまだ豊富に残されており、食料や林産物の生産だけ でなく、自然環境や国土の保全、水資源の涵養、グリーンツーリズムや情操教育の場の提供など都市の人々にとっても多面的で重要な役割を果たしています。最 近は、ゆとり・やすらぎ、安全安心が求められ、美しい農山村景観の保全、スローライフ、再生可能エネルギー活用への関心も広がる中で、国土面積の7割を占めるこの地域に対する国民の関心も高まってきています。

 しかし、中山間地域では、総じて過疎化・高齢化が進行しており、コ ミュニティ機能の低下した地域では、耕作放棄地の増加、鳥獣害の発生、伝統的祭事の衰退、景観の荒廃などの深刻な事態が生じています。政府の調査でも今後 「集落消滅の可能性がある」地域も少なくなく、中山間地域の荒廃は、下流域の都市生活にその影響が及ぶおそれもあります。

 こうしたことから中山間地域フォーラムは、20067月 の設立以来、さまざまな分野の専門知識や豊かな実務経験を有する産学民官の皆様が集い、中山間地域の再生を図るべく、シンポジウムの開催、モデル地区の支 援、政策提言などの活動を行ってきました。その結果、中山間地域振興に係る幅広い議論や情報発信を行い、国土形成計画や中山間地域等直接支払制度にも当 フォーラムの政策提言が反映されるとともに、モデル地区の群馬県南牧村では地元の皆様の新しい活動が芽生えるなど、一定の成果を上げてきました。

 しかしながら、わが国経済の低迷、人口減少時代への突入、TPP参加問題の提起などますます厳しさを増す環境の中で、広域市町村合併もあって条件不利な集落にきめ細かい配慮や支援が行き届きにくくなっている中山間地域の現況に鑑みれば、われわれはまだまだ力不足であり、地域の住民・NPO・大学等による懸命な地域おこし活動を支援する国民的な活動をさらに拡充していく必要があります。

 また中山間地域フォーラムでは、これまで、各界有識者の方々のご厚 意により、その運営や事務的な活動はもとより、シンポジウムの講師も原則無償でお願いするなど、いわゆる「手弁当」で活動を進めてきましたが、さらに活動 を充実させていくためには、法人格を取得し、社会的信用力を高めるとともに、財政基盤も安定したものにしていく必要があります。

 以上のようなことから、中山間地域フォーラムとしては、この際NPO法 に基づく特定非営利活動法人の認証を受け、社会的信頼性を高めるとともに、広く市民、企業などの方々からのご支援ご協力も得ながら、東日本大震災後の価値 観の変化など新たな時代における中山間地域への期待を踏まえつつ、中山間地域に熱い思いを抱く皆様と連携して中山間地域再生の活動を一層充実させていくこといたします。

 私たちは、日本人のふるさと・原風景であり多面的で重要な役割を担 い可能性に満ちたかけがえのない中山間地域の再生に向けて、多様な領域の専門家・実務家や市民が連携し英知と熱意を結集するとともに、意欲的な現地の活動 に呼応して支援の輪を広げていくことを決意して、特定非営利活動法人「中山間地域フォーラム」を設立します。

 

平成2471

設立代表者   佐 藤 洋 平